★ピーナッツのアニメーションは何本作られていますか?
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【最初に】
昔々,夏休みや冬休みにNHKで谷啓さんやうつみみどりさんの吹き替え(年代が分かりますね)でピーナッツのアニメーションが時折,放送されていました。私はこのアニメーションを偶然見なかったら,これほどピーナッツにはまらなかっただろうと思っています。アニメーションのピーナッツは,おしゃれなジャズのBGMに可愛くてカラフルな画面,そしてもちろん原作がピーナッツなのですから,子ども向けアニメなのに妙に大人びた雰囲気も醸し出していて,魅力的でした。
しかし,アニメーション作品は「ピーナッツのアニメ」としてだけでなく「スヌーピーのアニメ」としてより多くの人,特に小さな子どもたちの期待に応えなければならない使命を帯びていきます。世代を超えた老若男女に楽しんでもらえるものにするめ,アニメーションでは「大人が登場する」「赤毛の女の子が登場する」などコミックの世界では50年間守られてきたルールーがたくさん破られ,原作の大人 向けの新聞漫画の世界から,テレビアニメーション用に大きく変えられてしまった作品も作られていくことになります。シュルツさん自身も「アニメーションとコミックは別物」とコメントしたことがありますが,新聞漫画としてのピーナッツとはまた違うのが「アニメーションとしてのピーナッツ」なのです。
そのため,新聞掲載漫画としてのピーナッツを探求しているこのサイトでは,アニメの中のお話と新聞漫画の中のお話がごちゃ混ぜになってしまわないように,あくまでも「アニメ」の扱いは「その他」とさせていただいています。
【アニメーション作品が作られるまでのお話】
TVにピーナッツが初登場したのは,なんとコマーシャルでした。
ピーナッツは車メーカーのフォード社のファルコンという車のイメージキャラクターとして50年代後半から60年代前半にかけてカタログ等の印刷物に登場し宣伝に一役買っていました。そして,テレビCMが制作されることとなります。この辺りの当時の資料は「PEANUTS THE ART OF CHARLES ,. SCHULZ」という本の中に写真として掲載されています。
いろいろな本には1960年にファルコンのCMが初登場したという記述がありますが,実際に調べてみると1959年制作とされる何本かのCMの映像が見つかります。また,同時期にCMだけでなく同時期にフォード社の提供する「テネシー・アーニー・フォード・ショー」という番組のオープンングアニメーションにもピーナッツの仲間たちが何度か登場していました。
youtubeで見つけたテネシー・アーニー・フォード・ショーの映像
1960年になるとカラーで製作されるようになったようです。
その後。1963年に独立したばかりの番組プロデューサーのリー・メンデルソンさんがチャールズ・M・シュルツについてのドキュメンタリー番組「A BOY NAMED CHARLIE BROWN」を企画し制作します。これはドキュメンタリーといいながらもピーナッツ原作を元に制作されたアニメーションアニメが折々に挿入されていて,ほぼアニメーション作品といってもよいものでした。もちろん,このアニメーション部分を製作したのはそれまでCM等でピーナッツアニメを手がけてきたビル・メレンデスさんです。
しかし,このドキュメンタリー番組は制作されたもののなんということかスポンサーがつかず,放送されませんでした。当時の新聞漫画としてピーナッツは絶大な人気を得ていましたが,テレビ番組として成功するとは思われなかったようです。
しかしながら,この作品がその後のピーナッツアニメの原点ともなった作品となっているのは間違いありません。すでに音楽にジャズ・ピアニストのヴィンス・ガラルディを起用されていて,その後のアニメーションで使用された多くの楽曲は実はこのドキュメンタリーのために書かれたのです(このドキュメンタリーは放送されませんでしたが,「A BOY NAMED CHARLIE BROWN」というタイトルのこの番組のサウンドトラックアルバムは1965年に発売されました)。
下の動画はそのドキュメンタリー「A BOY NAMED CHARLIE BROWN」の一部でシュルツさんがチャーリーブラウンを描くところです。公式動画として提供されいます。
※ちなみにこの初のドキュメンタリー「A BOY NAMED CHARLIE BROWN」は,その後のテレビスペシャルの成功を受けて,1969年に多少手を加えられ放送されました。現在は,オリジナルのものがチャールズ・M・ シュルツ・ミュージアムのグッズショップDVDとして発売されています。
さて,未放送に終わりましたが,このドキュメンタリー番組の製作がきっかけでコカコーラ社が1965年の5月頃,リー・メン デルソンにクリスマス用特番の製作を依頼してきます。これがアニメ1作目「A Charlie Brown Christmas」の制作へとつながりました。実際はかなり急ごしらえの企画だったようですが,結果,視聴率45%いう大ヒット,50年以上たってもクリスマスシーズンには再放送されるアニメーションとなりました。そこから,ピーナッツのアニメは『TVスペシャル』として年に1本もしくは2本の割合で放送されるようになったのです。
上の年表から各年代の「ピーナッツのアニメーション年表」に行けます。
ただ年表にするだけではつまらないので,コメント&お薦め度も添えました。
【最初に,「アニメは別物!」と,述べましたが・・・】
「アニメーションにも原作者シュルツさんがちゃんと関わっている」のです。デリック・バング著「スヌーピーたちの50年分のHAPPY BOOK」によれば,「シュルツ,メンデルソンとメレンデスの三人が考えを出すが,シュルツさんの意見を尊重する。」,「シュルツさんが台本の大半を書いている。」ということです。酷いアニメ作品も多いのですが,シュルツさんは新聞コミックでできなかった(もしくはできない)アイディアや思いつきをアニメで実現させていたように思います。私は,「ピーナッツのアニメは何本作られていますか?」というこのトピックをまとめていく中で,「何もかもダメ男のチャーリー・ブラウンをアニメでは少しだけ幸せにしてあげたい。」というようなシュルツさんの気持ちもあるように感じられました。
ともかく,アニメピーナッツもシュルツさんが生み出したもう一つのピーナッツの世界であることは間違いないのです。まぁ,原作者が関わったアニメが良作になるとは限らないというのは,日本の様々なアニメーション作品でも証明されていますが・・(笑)。
ちなみに,シュルツさんが亡くなったあとの作品のアニメクレジットは"Charles M. Schulz (created by)"という表示になりました。
一つ一つのアニメーションの内容を詳しく知りたい人はTOSHIKIさんのHPへどうぞ。